天理大学アメリカス学会特別講演会
吉川敏博先生の司会で開幕 小坂允雄副会長の挨拶 野口茂先生の研究報告 橋本武人学長の挨拶
小和田恆元国連大使の講演風景 講演会場の様子 小和田恆元国連大使の講演風景 北詰洋一会長の挨拶

  2000年5月20日(土)午後3時〜5時、元国連大使・日本国際問題研究所理事長の小和田恆(おわだ ひさし)氏による、「国際秩序と米国」と題する講演が行われました。会場の天理大学2号棟24A階段教室は、満席のうえ多数の立ち見のかたもおられ、300名を越える聴取が時間を忘れ熱心に講演に耳をかたむけていました。
  小和田氏の講演は、現在の国際秩序を考えるうえで前提とすべき2つの要素を、@冷戦構造の崩壊、とA世界のグローバル化、と定義したうえで、そのさいに米国の果たすべき役割はいかなるものか、ということが主要テーマとなりました。ことの是非はともかくとして、冷戦構造は米ソ2大国による相互確証破壊(MAD)によって皮肉にも均衡が保たれていました。ベルリンの壁崩壊とソビエト連邦の解体により、このあやうい均衡が破れ、いまや米国ひとりがスーパーパワーとして、国際秩序維持の役割を担うことが期待されるようになりました。また、現在の国際社会は例えば「地球の温暖化」などの環境問題にみられるように、もはや地域社会や一国の単位で解決できないような地球規模の問題が生起しています。
  このような状況において、米国がおちいる可能性のある2つの悪い方向は、@孤立主義、とAユニラテラル・グローバリズムです。広大な国土と資源を有する米国は自給自足のできる国であり、歴史的にみても覇権主義的な国ではなく、むしろ孤立主義におちいる危険性のほうが強いのです。ブッシュ大統領をやぶって、クリントン大統領が当選したのも、米国市民が国内問題を重視しはじめたことのあらわれと見ることができるのです。また、その逆の国際的協調を無視した独善的正義の執行に走るユニラテラル・グローバリズムも国際秩序にとって、歓迎されることではありません。そこで、 米国に期待されるのは、レラクタント・シェリフ(しかたなく引き受ける保安官)としての役割であると、小和田氏はしめくくりました。
  講演要旨は以上のとおりですが、外交官として長年にわたって国際舞台で活躍されてきた小和田氏の経験と知識がおしげもなくちりばめられた講演を、紹介することはとてもできません。最後に、当日の講演の臨場感を伝えるために、天理大のある学生のコメントを引用しておきます。講演会はどうでしたか、という私の質問にたいし、「講演が終わっても、もっと聴いていたいと思うようなすてきな講演でした」という、おそらく聴衆のだれもがもったであろう感想を素直に表現してくれました。(JH)