天理大学

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地域文化研究センター

「宗教のグローバル化」と「グローバル化の中の宗教」

研究代表者:住原則也

概要

 現在、グローバル化の現象は人間生活のあらゆる側面に関連し、宗教もまた例外ではありえない。宗教はグローバル化現象の影響を受けざるを得ないとともに、宗教そのものがグローバルに伝播している。

 宗教が国境や文化・言語の壁を越えてグローバルに広がってゆく現象は、その過程がどのようであれ、仏教、キリスト教、イスラム教など古くからみられたことである。そういう意味で、宗教がグローバル化することは決して新しい現象ではない。この研究会の一つのテーマは、宗教が国境や文化の壁をこえてどのように伝播するのか、つまり「宗教のグローバル化」過程について探求することにある。

 天理教では、世界宗教としての自覚の元にこれまでさまざまな異文化伝道の理論的・実践的探求を試みてきた。21世紀を迎えた今日、とくにグローバル化の大きな流れの中で、どのように布教伝道の方向定位を行っていくかは、きわめて重要な課題である。そうしたとき、あらためて他宗教がグローバル化の流れの中で、いかにアイデンティティーを保ちながら世界に広まってきたかを再確認し、それを「だめの教え」としての本教の異文化伝道論に反映させていくことは、大きな意義がある研究テーマとなるであろう。

 また一方では、交通手段と情報伝達手段が革命的な発展をとげた現代に進行するグローバル化の波は、既存のどのようなローカルな宗教の上にも影響をあたえざるを得ない。

 一つは、単なる信仰の対象としての宗教から、情報のボーダーレス化が進み、多様な価値観が流布する中で、揺らぐ伝統やアイデンティティを再確認するための核としての、伝統宗教への傾倒といった現象もある。

 さらに一方では、グローバル(地球規模)に展開する情報と、すべてのものを市場経済の原理に取り込もうとする大きな波の中で、人々は宗教と向き合う姿勢の多様化という側面がある。従来、信仰するとは何らかの宗教団体や宗派といった教団に所属するということであったり、あるいは、既存の宗教を受け入れられなければ新たな教えをうち立て教団化してゆくことであった。ところが今、そのどちらの方向性とも違った大きな流れがある。それは既存の教団に属そうとはしない一方で、超自然的な力や存在への興味や信仰への傾倒である。親や一族や地域が共有してきた信仰を、若い世代がいとも簡単に捨ててゆくことも珍しくはない。

 何を「宗教現象」と言うか言わないかは議論が必要であろうが、大切なことは、このような現象を通じて、宗教もまた商品化され市場原理の中に引きずり込まれる可能性の増大である。すでにそうなっているのかもしれない。伝統的宗教も新宗教あるいは「新新宗教」(西山茂氏)と呼ばれるもの、さらに宗教まがいのものも、丁度スーパーやコンビニの棚に並ぶ商品のように、客の好みで断片的に選び取る対象となっているのではないだろうか。どのような人でも、宗教的情報(商品)の発信者になれること自体がグローバル化現象であるといえる。歴史ある宗教組織の真摯な主観的な視点とは別の次元で、このような宗教の市場化が進行しているのは、グローバル化がもたらす一側面と考えられる。宗教学者井上順孝氏などの、「(宗教市場における自由競争が起っており)、これは市場経済のあやうさと同じあやうさ持つことになる」とし、「宗教はなんのためにあるのかということが見えなくなってきている」といった指摘もある。

 このような認識を踏まえてみるとき、グローバル化現象の中の宗教とはどのような存在であるのか、あるいは、あるべきなのか、を問うてみる必要性が増大していると考えられる。宗教学者の中にはこの問題意識を持っている人々はいても、末だ十分に議論がなされているとは言い難い。むしろ始まったばかりと言える。

 さらに2004年度からは、「宗教」「グローバル化」という二つのキーワードに加えて、「経営」という第三のキーワードを追加している。企業体に限らずあらゆる組織や団体のグローバルな展開の中で、経営行為がどのように宗教と関係しあっているのかを見ることは、現代的なテーマであると考えるからである。

共同研究員

住原則也(天理大学教授)
岡田正彦(天理大学助教授)
中牧弘允(国立民族学博物館教授)
島薗 進(東京大学教授)
井上順孝(國學院大学教授)
岩井洋(関西国際大学助教授)
樫尾直樹(慶應義塾大学助教授)

これまでの活動(敬称略)

2002年11月17日

井上順孝「インターネットが宗教界にもたらすもの」

2003年2月22日

弓山達也(大正大学助教授 招聘講師)
「現代における霊性の回復」

2003年7月5日

片倉もとこ(中央大学教授 招聘講師)
「『イスラームのグローバル化』と『グローバル化の中のイスラーム』
——Islamization? or Localization?」——

2003年12月18日

樫尾直樹
「非グローバル化論—崇教真光の事例から—」

2004年2月23日

伊東雅之(愛知学院大学助教授 招聘講師)
「グローバル文化とローカル性の<あいだ>——和尚ラジニーシ・ムーブメントの場合」

2004年7月11日

村山元理(常磐大学助教授 招聘講師)
「SRW(Spirituality and Religion at Work)研究の動向」

2004年7月11日

吉原和男(慶應義塾大学教授 招聘講師)
「華人宗教の国際的ネットワークとグローバリゼーション:徳教を事例にして」

2004年12月18日

中牧弘允
「暦にみる世界の宗教文化−グローバル化との関連で」
 以上のような話題提供の他、本共同研究会では、ほぼ毎回、古都奈良の地域の社寺をお訪ねし、とりわけ国際的な活動に焦点を当ててフィールドワークも実施している。これまで、春日大社、東大寺、天川大弁才天神社、壺阪寺(南法華寺)、金峯山寺、などに出かけている。この活動には、奈良学(ナラロジー)に、グローバル化という新しい光を当てようとする目論見でもある。フィールドワークに際しては、歴史に詳しい特別講師も招いての解説もお願いしている(これまでの特別講師として、幡鎌一弘:天理大学 おやさと研究所助教授、鎌田東二:京都造形芸術大学芸術学部教授、をお招きした)

今後の活動

 これまでの活動のまとめを出版物として一度世間に問いかけ研究活動を進化させてゆきたい。

 研究成果は、『宗教・グローバル化・ナラロジー』(世界思想社刊)として出版予定(2006年)

(2004年12月21日 文責 住原則也)
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