国 際 文 化 学 部 懇 話 会 −第2回概要−



研究フォーラム「物・人・情報からさぐるアジア交流史」

◆概 要
 日 時: 2002年1月12日(土)13:00〜16:30
 場 所: 天理大学研究棟3階第1会議室
 報 告: 高橋 公明、平木 實、岡本 弘道、荒野 泰典、村尾 進、杉本 史子
 司 会: 鶴田啓(東京大学史料編纂所助教授)、藤田明良(天理大学国際文化学部助教授)
 主 催: 天理大学学術研究助成共同研究「物・人・情報の動きから見たアジア諸地域の交流史」
       日本学術振興会科学研究補助金共同研究「8-17世紀の東アジア地域における人・物・情報の交流」
       海域アジア史研究会
 後 援: 天理大学国際文化学部


◆趣旨と概要
 この研究フォーラムは、今年度より新設された研究助成制度を利用して、国際文化学部の共同研究メンバーが、 文部科学省(日本学術振興会)科学研究補助金を受けている学術調査団(代表・村井章介東京大学教授)や、両者 と関係の深い海域アジア史研究会と共同で、国際文化学部の後援を得て開催した。近年注目されている一国史の 枠組でとられきれない、国境をこえた交流史の研究前進のため、新たな視角や対象・方法などについて問題提起を おこなうことを目的とした。研究の最先端の専門的な内容ながら、最一線の研究者が顔をそろえたため、天理大学の 学生・教職員だけでなく、京都大学、大阪大学、大阪外国語大学、神戸女学院大学、奈良大学など関西一円の大学、 さらには名古屋大学、東京大学、広島大学など遠方からも、教員・大学院生・学生など参加者50名あまりが集まった。 熱心さのあまり予定時間をオーバーする報告が続出したため、討論の時間が充分にとれなかったが、気鋭の院生たちが 争うように質問に手を挙げ、終了後も駅に向う道すがらが、あちこちで議論する姿がめだった。

◆報告内容
 高橋 公明 「外交文書を異国牒状と呼ぶこと」:
  さまざまな様式をもつ中国や高麗からの外交文書が、中世日本で一律に「牒状」と呼ばれる事実から、対外姿勢の 中世的特質を探ろうとした。

 平木 實 「朝鮮王朝初期の虎について」:
  毛皮などが重要な輸出品となった朝鮮虎が、政府の強い統制を受けていたことを指摘、捕獲方法や貢上制度の実態や 朝鮮社会における動物観に迫った。

 岡本 弘道 「明代・朝貢の捉え方」:
  前近代アジア外交のキーワードでありながら、概念規定や実態把握が論者によってバラバラな「朝貢」について、 地道な分析作業から、新たな研究展望を述べた。

 荒野 泰典 「茶屋新六交趾国貿易渡海図に関する一考察」:
  従来、朱印船貿易の様子を再現した絵画資料と評価されてきた同図の詳細な調査から、描かれた内容や成立過程 などについて、再検討する必要性を提起した。

 村尾 進 「声名、中国に洋溢し、施して−士大夫にとっての冊封と朝貢−」:
  中国の外交や対外窓口としての広州を、清代の士大夫という歴史的個性の体験・自他認識・行為などの「はたらき」 から、とらえなおそうとした。

 杉本 史子 「並木正三『三千世界商往来』をめぐって」:
  海賊の頭目が海外諸島・諸国を味方に謀反を企むという歌舞伎をとりあげ、善悪と国の内外が交錯する近世日本社会 の世界認識の構造と特質に迫った。



◆報告者の横顔
 高橋公明(名古屋大学大学院国際開発科教授・日本中世史)
 中世日本と東アジアの国際関係を、外交秩序から海民の動向まで幅広く視野に入れて、解明を進める。著書に 『周縁から見た中世日本』(共著・講談社)、論文に「中世の海域世界と済州島」など。

 荒野泰典(立教大学文学部教授・日本近世史)
 一国の枠にとらわれず、アジア全体の国際関係のなかで日本史を解く研究を、牽引してきた。今回は独自の角度から 読み込むことによって、「朱印船絵巻」の新たな歴史情報を引き出すことを目指す。著書に『近世日本と東アジア』 (東京大学出版会)、『アジアのなかの日本史T〜Y』(編著・同)など。

 平木實(天理大学国際文化学部教授・朝鮮社会文化史)
 政治・社会・文化・思想など朝鮮王朝時代を幅広く研究。近年はアジア全体を視野に、朝鮮のの特質を論じる。 著書に『朝鮮社会文化史研究』(国書刊行会)、論文に「朝鮮時代前期の胡椒交易をめぐって」など。

 岡本弘道(京都大学大学院を経て日本学術振興会特別研究員・中国琉球関係史)
 昨秋、留学を終え中国福建省から帰国したばかり。アジア海上交流史研究の新世代の担い手の一人。論文に「明朝初期に おける琉球の官生派遣について」、「明朝における朝貢国琉球の位置付けとその変化」など。

 村尾進(天理大学国際文化学部助教授・中国明清史)
 思想史からスタートし、外交使節や港市・客館など、中国社会と海外との接点についての研究を展開中。著書に 『増訂・琉球使録および外題』(共著・榕樹書林)、論文に「ガラス絵『広州商館図』」など。

 杉本史子(東京大学史料編纂所助教授・日本近世史)
 国絵図作成など領域支配の在り方から日本近世国家を解明。近年は地図等の国際比較も手がける。著書に、 『領域支配の展開と近世』(山川出版社)、『地図と絵図の社会文化史』(編著・東京大学出版会)など。


◆主催団体などについて
 天理大学 学術研究助成 共同研究(代表・藤田明良国際文化学部助教授)
 「物・人・情報の動きから見たアジア諸地域の交流史」
歴史学では近年、一国史の枠組みにとらわれず、包括的あるいは多面的な地域像を描くことが求められている。アジアに おいても、複数の国を包括する文化圏や「交易ネットワーク」、国家の枠をこえる「地域」や「海域」等への関心は高まって いるが、モデルや理論が先行し、実証研究による史実の検証は、緒についたばかりと言わざるを得ない。当共同研究は、物・ 人・情報の動きの具体的考察からこの課題に迫り、諸地域の持つ政治・経済・文化システムの相互連関と全体構造を検証し、 その歴史的変容を考察することを、目的とする。同時に、対象とする国や地域を越えた学内の研究交流の活性化や、本学が 所蔵する 多彩な学術資産の価値や情報を、学内外へ発信することも、この共同作業の目的としている。

 日本学術振興会 科学研究補助金 共同研究(代表・村井章介東京大学教授)
 「8-17世紀の東アジア地域における人・物・情報の交流」
 混迷を深める現代の国際情勢のなかで、華僑経済圏の広がりや国境を越えた人の動きに見られるように、「東アジア地域」 の持つ意味はますます高まっている。本研究では、この地域が密接な交流で結ばれ、一つの有機的な歴史空間を形成するに至 る歴史的経緯を、8〜17世紀という比較的長いスパンで切り取って、明らかにしていく。具体的には、当該地域における大陸 沿岸・半島部・島嶼部の内部交流のみならず、地域外にも開かれた国際港湾都市(港市)およびそれらを相互に結びつける海上 ネットワーク(海域)に注目し、異民族・異文化の交流、さまざまな世界観・情報の出逢いと融合・摩擦の様相を明らかにする。 そのために、5つの研究班(1班:博多・対馬・三浦と日朝(韓日)関係、2班:使節・巡礼僧の旅、3班:琉球ネットワーク論、 4班:倭寇ネットワーク論、5班:世界観と異文化コミュニケーション)を編成する。今回は5班を中心とするメンバーが、 天理大学付属天理図書館所蔵の地図・絵図などを調査訪問。

 海域アジア研究会 代表:桃木至朗(大阪大学大学院文学研究科助教授)。事務局:大阪大学大学院文学研究科東洋史研究室内。
 1992年に結成。一国史の枠にとらわれずアジアの海事史や交流史を対象にする研究団体。日本史・東洋史・東南アジア史 などの若手研究者が中心で、これまでの月例会で扱ったテーマは、紀元前中国の外交秩序から阪神大震災下でのベトナム人社会 まで、多岐に及ぶ。




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